高速で動く原子やナノの世界の動きを見るには、超高速度のカメラが必要です。動きの時間よりも短い発光時間のフラッシュで被写体を照明することにより、ぶれずに止まって見えるスナップ写真を撮影することができます。蓄積リングを使った従来の放射光X線の発光時間は、通常、短くても十ピコ秒程です。このため原子やナノの世界の動きを見るには十分とは言えませんでした。現行のX線レーザーでは、さらに短いフェムト秒の発光時間が実現可能といわれています。
波長の短いX線は、可視光などよりも、もっと小さなものを見ることができ、原子の位置をも決めることができます。さらに、X線の発光時間を極限まで短くすると、可視光などでみるよりも高速の現象を観察できます。つまり、X線は原子やナノの世界の姿と動きをみる極めて高い潜在能力を持っているのです。試料にコヒーレントX線を当てて、散乱したX線のパターンの時間ごとのスナップ写真を記録し、計算機で処理することにより、試料内部のナノの世界の動きが見えます。
図 X線自由電子レーザーを用いたフェムト秒コヒーレントイメージングの概念図